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中級:中国語翻訳も日本語力が大事だよという話 | 明海大学 石井理オンライン研究室

中級:中国語翻訳も日本語力が大事だよという話

中国語

はじめに

学生さんにニュース記事の中国語訳をしてもらうと、教科書の例文や中国語検定の日中翻訳問題などと比べると、少し訳しづらいというコメントをもらうことがあります。
ひとつには書き言葉(文章語)のような堅い言い回しが多用されることが考えられますが、これについては抽象語成語古典の引用など、話し始めるととても1つの記事では終わらなくなってしまいます。
そこで、本記事でまずオススメしたいのが、「ぎゅっと凝縮された文を翻訳用の日本語に展開する」という方法です。
そもそも、新聞やニュースの記事には文字数の制限があるため、必要最低限の文字数に凝縮して伝える必要があります。そのため、何百ページもある小説や論文と比べると、力の密度がぎゅっと増している反面、舌ったらずな部分があることが多いです。
これを逆に言うと、上手に訳すためには、ぎゅっと縮められる前の状態に戻してやる必要があるわけです。たとえるならば、乾燥しいたけやキクラゲも、料理に使うためには、一度お湯をかけてふやふやにしなければならないのと少し似ています。

ではさっそく

さて、何気なくネットニュースを見ていると、次のような見出しの記事がありました。
ミラン副会長 本田は移籍先探す3選手のひとり 伊ガゼッタ紙報じる
  今回はこのタイトルを使って練習してみましょう。 単語一覧
  • 米兰 Mǐlán:ミラン
  • 副会长 fùhùizhǎng:副会長
  • 转移目的地 zhǔanyí mùdìdì:移籍先
  • 找 zhǎo:探す
  • 球员 qiúyuán:選手
  • 意大利 Yìdàlì:イタリア
  • 媒体 méitǐ:メディア
  • 报道 bàodào:報じる
これらの単語を使って上の日本語をそのまま中国語に直訳してみると以下のような形でしょうか。
 
  • 米兰副会长 本田是找转会目的地的三球员之一 意大利媒体报道
 
まあ、わからなくはないかもしれません。
 
しかし、人によっては理解しにくいということがあるかもしれません(これは日本語のタイトルの時点で既にそうなのですが)。
 
ミラン、副会長、本田…と聞いてパッと頭にサッカーが浮かぶ人の方が多いのかもしれませんが、必ずしもそうとも限りませんよね。
 
ひょっとしたら「ACミラン副会長の本田が…」という意味のかたまりで取ってしまう人がいないとも限りません。
 
ということで、ところどころ日本語を補ってやると、こんな感じでしょうか。
 
  • イタリアの新聞メディアの報道によれば、A.C.ミランの副会長「本田は移籍先を探す3選手のひとりである」と発言した。
 

そろそろ回答例

 
さて、ここまで下準備を進めたところで、突然の穴埋め問題です。
次の日本語文を中国語に訳すとき、カッコの中に一文字入れるとしたら、何が相応しいでしょうか。
  • 本田は移籍先探す3選手のひとり
  • 本田是(   )找转移目的地的三个球员之一。 
前節の最後に示した日本語は、かなり丁寧な言い方にはなっています。
大体の場合は、この時点で役に取り掛かっても、大きな問題はないでしょう。
ただ、日本語特有の曖昧さが残っている場合があります。
今回の場合も、少し考えなくてはならないことがあります。
たとえば、「探す」というのが、本田選手が移籍先をいま探しているのか、それともこれから探すのか、少し曖昧ですね。
  実は僕は、このあたりの事情については詳しくないので、というか記事を読んでもよく分からなかったので、とりあえず以下2通りの訳を提示しておきます。  
  • いま探しているのであれば…
    • 据意大利媒体报道,AC米兰副会长说本田是找转移目的地的三个球员之一。
  • これから探すのであれば…
    • 据意大利媒体报道,AC米兰副会长说本田是找转移目的地的三个球员之一。
 
回答が2つあるなんて…とお思いかもしれませんが、たった1文字の違いで状況の違いが現れてしまうというのが、日中翻訳の面白いところでもあり、難しいところでもあります。
 

少し真面目な話

言葉には、良くも悪くも力があります。それはどんなに短い文であってもそうで、むしろ短ければ短いほど、即効性が増してくるように思います。 ちなみに、ネットニュースの場合は、Google検索やポータルサイトに掲載されるときに、目を引くワードが目立つようにタイトルをつける傾向にあります。 大手メディアのデジタル版などでも、敢えて奇妙な言葉や有名人の名前を使った記事など、目を引くタイトルが増えてきているような気がします。最近であれば「足なめ男」や「おでんツンツン男」。また、議員の資産公開の記事で、わざわざ特定の歌手の名前と写真を表に出して興味を引こうとするものもありました。 さらに甚だしい場合、つまりいわゆる煽り記事とか釣りとか呼ばれる類のものは、意図的に誤解や曲解を招くように記事タイトルをつけていることがあるので、筆者や編集者の意図を考えながら、注意深く読む必要があります。 これはメディアリテラシーのお話なので、今回のこととは関係ないのですが、中国関係の記事の場合、避けては通れないことなので、少し言い添えてみました。

まとめ

というわけで、今日は外国語に翻訳するときに、実は元になる日本語文の意味構造からしっかりと理解していることが大事だよという話でした。
 
特に、外国語に翻訳するにあたって過不足の無い、あるいは論理的な矛盾の無い日本語となっているかというのは意外と重要なことですので、日本語母語話者の方々は、ぜひ母語力のブラッシュアップも忘れないでほしいと思います。
ではでは、今後とも、中国語を学んでいる高校生も大学生も、もちろん社会人の方々に読んでいただける記事を書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
 

注釈

実際の記事を読んでみると以下のようにあります。
ACミランの日本代表FW本田圭佑(30)に関し、同クラブのアドリアーノ・ガリアーニ副会長(72)がこの1月に移籍先を探す3選手のうちひとりであると、1日付のガゼッタ・デロ・スポルト紙が報じた。
とあります。
非常に細かいですが、この文、主語と述語が対応していませんね。
おそらく副会長がこうこうこのように述べたという記事なんだと思います。
  • (略)本田に関し、(略)アドリアーノ・ガリアーニ副会長が、(略)3選手のうちひとりであると【述べたと】、(略)ガゼッタ・デロ・スポルト紙が、報じた。
「そんなの分かるからどっちでもいいよ!」という声が聞こえてきそうですが、一応、注釈として記しておきます。

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